リウマチの療法:リウマチの症状と治療

福祉制度の利用について

関節リウマチの病気を持っていても地域で暮らしながら治療を進められるように,生活を支えるさまざまな福祉制度が設けられている.

関節リウマチの患者さんが利用できる福祉制度には,身体障害者を対象としたもの,高齢者を対象としたもの,難病患者を対象としたものなどがある.

身体障害者を対象としたサービスを利用するためには,まず身体障害者手帳を取得することが前提となる.

手帳取得の手順として,まず居住地の役所(福祉事務所)で申請用紙を入手し,医療機関が作成した診断書などとともに,役所に提出する. その後,障害程度(1〜6級)が認定され,1〜2ヶ月ほどで障害者手帳が交付される.

また平成18年から障害者自立支援法が施行されました.

これにより,障害福祉サービスを受けようとする人は,市町村から「障害程度区分」の認定を受けることが必要になった.

区分は軽度の1〜重度の6区分に分かれており,利用できるサービス内容は,障害程度区分によって異なる.

自立支援法により,障害程度区分(支援の必要度合い)に応じた公平なサービス提供や,利用者本位のサービス体系への再編などが行なわれるようになった.

しかし,福祉サービスを利用した際の食費等の実費負担や,利用したサービスの量などに応じた利用者負担(1割)が求められるため,実際には生活がし易くなったとは言えない人もいるようだ.

負担額の上限の設定や,低所得者に対する負担軽減制度もあるので,福祉担当窓口に相談するなどして,今あるサービスを上手に使えるとよいと思う.

手術療法について

関節リウマチでは一般に,薬物療法やリハビリでは病気の改善が難しく,手術をすれば生活の質(QOL)を向上できる場合に,手術療法が検討される.

関節リウマチに対する手術療法は,関節破壊が起こる前に炎症部分を取り除く手術と,破壊された関節に対する手術の2つに分けられる.

前者は,炎症を起こしている滑膜を切除して病気の進行を抑える目的で行なわれる「滑膜切除術」だ.

主に手の指,手首,肘,肩などの関節に行なわれる.

後者には,破壊された関節を固定する「関節固定術」と,人工的に関節を作り直す「人工関節置換術」があり,特に人工関節置換術は関節リウマチの手術ではもっとも多く行なわれている.

人工関節置換術は,破壊された関節部分の骨を切り取り,代わりに人工関節を固定して,関節が動くようにするのが目的だ.

関節の部位では,膝がもっとも多く,次いで股関節,手指,肘,足首,肩,の順になる.

この手術では,早くから痛みがとれ,歩きやすくなるなど,関節機能の改善と,日常生活動作の回復において効果的だ.

しかし,片方のみ膝関節に手術をした場合は,もう片方の膝関節に体重がかかることから,負担が増して症状を悪化させ,そちらも手術が必要になるケースが多い.

長く闘病生活を続ける患者さんにとって,また,進学や就職を目指す若い患者さんにとって,手術療法は素晴らしい選択になる.

しかし,あくまで局所療法であること,1回の手術では済まないことが多いこと,術後にリハビリに費やす時間が必要なことなども覚えておく必要がある.

装具療法について

関節リウマチのリハビリの中に,装具療法という治療法がある.

装具には,関節の安静を保ち炎症を鎮める効果,関節の変形の進行を予防する効果,関節にかかる負担を軽減する効果などがある.

つまり,装具を装着すること自体が治療となるのだ.

関節リウマチの関節変形は個人差が大きいため,画一的な装具で患者さん全体に対処するのは困難だ.

そこで装具は,強固な固定や過度の変形矯正は行なわないこと,患者さんが自分ひとりで装着が可能なこと,軽量であること,装着感がよいこと,などの点に留意して作られている.

しかし外見上の問題から,せっかくの装具を取り外してしまう人もいるようだが,そのために関節に負担をかけてしまうと,炎症と変形を進めてしまうことになりかねません.

治療を第一に考え,お医者さんがすすめるのであれば,積極的に装着したいものだ.

軽量化や小型化も進んでおり,患者さんが使い易く改良されてきている.

例えば膝関節用の装具や手関節の保護具では,伸縮性のある補正下着用の生地が使用してあったり,面ファスナーで着脱し易く作ってある.

その支持性を高めるための工夫や,通気性なども考えられている.

また,治療のための装具とは異なるが,日常生活の動作を助けるために工夫された自助具もある.

このほか,電動歯ブラシや,上下するだけの水道のコックなど,関節への負担を軽減できる物も市販されているので,うまく活用してほしい.

運動療法のポイント

人間の体は,動かさないところから弱っていく.

とくに関節や筋肉,骨は,動かすことによってそれぞれの機能や新陳代謝が正常に維持され,強化される.

関節リウマチの患者さんは,体を動かさずにいると,関節の働きがますます低くなり,体を動かすために必要な筋肉も減って,骨が弱くなっていく.

動かないままでいると,やがて手足の関節や筋肉が固まって,動けなくなってしまう.

それを防ぐために,関節の機能を維持する運動や,筋力を維持する運動が大切なのだ.

運動療法のポイントは,関節を大きく動かし,痛みを感じるくらい力を入れることだ.

これは関節の動く範囲を狭めないためだ.

また,反動をつけずにゆっくりと行ないます.

筋力の強化のため,曲げ伸ばしの最後の動作で3〜5秒間しっかり力を入れる.

運動と運動の間には深呼吸をし,リラックスしてから次の運動に入る.

自分の病状に合わせて行なうことを忘れず,翌日に疲れを残さないことが大切だ.

最初は関節の痛みのために,ひとりでは十分に動かせませんが,理学療法士などの専門家に関節を痛めずに動かせる方法を指導してもらうといい.

手指,足,肩,膝など,全身の関節を動かすように組みたてられたリウマチ体操を,家事や仕事の合間に行なう習慣をつけるといいろう.

一度にすべての体操ができなくても,手指の運動,膝や足の運動,など,機会を見つけて生活に取り入れて,毎日続けることが大切だ.

関節リウマチにおけるリハビリ

関節リウマチの治療法には薬物療法,基礎療法,リハビリ,手術療法がある.

治療の中心となる薬物療法とほぼ同時に,リハビリが行なわれる.

リハビリは,症状の改善と,生活の不自由さの改善,つまりQOL(生活の質)の向上を目的としている.

リハビリの内容には,「理学療法」「運動療法」「作業療法」「装具療法」の4つがある.

このうち,関節リウマチの痛みや腫れ,こわばりをやわらげる方法は,理学療法にあたる.

主に温熱,赤外線,超音波,水や氷などの刺激を利用して炎症を抑え,痛みをやわらげる方法だ.

炎症で関節が腫れて痛みも激しい急性期には,症状が出ている関節をサポーターや装具で固定し,安静にしていると腫れや痛みもしだいに治まってくる.

このときには,ぬるめの入浴や手足の部分浴などで関節を温めると,関節の周りの血流がよくなり,痛みやこわばりが軽くなる.

このような温熱療法は,専門機関で行なわれる赤外線や超音波療法,レーザー療法などの電気療法のほかに,家庭でも簡単に自分で行なえるものもある.

入浴,部分浴,ホットパック,蒸しタオル,また温泉療法,温水プールを利用する方法などだ.

朝のこわばりが全身に感じられるときには入浴が効果的である,と,毎日朝風呂に入る患者さんもいます.

しかし,腫れて熱を持っている関節は,冷やした方が気分が良くなる場合も多いのだ.

その場合は,痛みのある関節だけを氷や冷湿布で冷やすようにしてほしい.

温めるか冷やすかは,ケースバイケースで行ないます.

関節リウマチ 鍼灸治療

鍼灸治療と言えば,まず肩こり,腰痛あたりがイメージできるのではないだろうか.

実際に,肩こり,腰痛に加えて膝の痛み,股関節の痛み,寝違い,ぎっくり腰,全身疲労などで治療を受ける人が多いようだ.

中には,しつこい頭痛や胃の不調,眼の疲れを訴えて通う人や,生活の質(QOL)の向上のために通うリウマチ患者さんもいるそうだ.

産婦人科によっては逆子治療にも鍼灸治療を取り入れているとも聞きますから,鍼灸はずいぶん応用範囲が広いと言えそうだ.

鍼灸治療を行なうと,その部分に集まってきた血液が,積極的に患部を治しにかかる.

と同時に,脳からは痛みを抑制する物質が出るようになり,痛みもやわらいでくるそうだ.

関節リウマチなどの痛みで緊張した患者さんは,次第に緊張が緩んでリラックスしてくる.

副交感神経が優位になってくるわけだ.

副交感神経は,心臓や消化器官,血液循環などが潤滑に機能するよう働きかけます.

つまり鍼灸によって病気の原因を根絶したり痛みなどの症状を抑えられるのではなく,患者さんが持っている 「自然治癒力」を引き出すひとつの方法と言えそうだ.

専門医が責任を持って行なうことは,それなりに効果があるとは思うが,何がどういった部分にどのように効くのか,自分で正しく理解し,判断する目を養うことも大切だ.

ちなみに鍼灸と聞くと「痛い,熱い」というイメージがあるが,鍼は髪の毛のように細くチクッとした痛みさえ感じない場合が多く,お灸も現在は火傷するほど熱くなく,それでも充分な効果が得られるそうだ.

関節リウマチ 運動の必要性

以前は,関節リウマチにかかるとまず安静にすべきであると考えられていた.

しかし「痛いから」と言って体を動かさないでいると,関節が動かしにくくなり,全身の筋肉が衰え,ついには寝たきりになってしまうおそれもある.

そのため今日では,関節の可動域をできるだけ保ち,筋力の低下を防ぐための運動療法が有効であると認められている.

関節の運動では,少し痛みを感じるところまで我慢して曲げ伸ばしすることが必要だ.

痛くない範囲だけで行なっていると,結局は関節の可動域を狭めることになる.

毎日,朝夕の2回くらいは腕や足の関節を動かしてほしい.

翌日まで疲れが残るような運動は,やり過ぎだ.

運動後,1時間ほど安静にしていると痛みが軽くなる,という程度が適当だろう.

骨は運動による負荷をかけないと,カルシウム分が抜けてもろくなる性質を持っている.

関節も動かさずにいると,関節液から軟骨への栄養が行き渡らず,骨の破壊を進めてしまうことになる.

しかし,あまり負荷をかけられない痛みの強い関節リウマチ患者さんの場合には,温水プールなどを利用した運動方法もある.

水中では浮力が働くため体重が軽くなり,陸上に比べて関節への負荷が軽くなる.

陸上では動かせなかった部分も水中では動かせるようになり,血液の流れもよくなる.

水中運動で関節の周りの筋力も少しずつ強化されていく.

しかし,患者さんの病状によっては必ずしも水中運動がよい場合ばかりではないので,行なう前にお医者さんと相談することが必要だ.

慢性関節リウマチ 基礎療法

慢性関節リウマチの治療方法は,基礎療法,薬物療法,リハビリテーション療法,手術療法と大きく4つに分類される.

4つの治療法の中で,土台となるのが基礎療法になる.

患者さん自身が毎日の生活をどのように送るべきかという基本的な療法だ.

まず自分の病気を正しく知ることだ.

慢性関節リウマチは,一人ひとり症状も病気の進行も異なる.

自分のリウマチの性格を知って,どういう生活を心がければいいのかを理解することが大切だ.

また,リウマチには「だるい」「疲れやすい」などの全身症状があることを,周囲の人々にも理解してもらうことも大切だ.

次に適度な運動と安静が必要だ.

慢性関節リウマチの場合,関節が痛いからといってまったく動かずにいると,関節が固まってしまい,かえって日常生活に支障が出てしまう.

そのため,適度な運動を毎日することが大切になる.

ただし,関節に腫れがあるときや,発熱などの症状があるときは安静が必要となる.

運動と安静のバランスを考え,お医者さんや理学療法士と相談しながら行なう必要がある.

次にバランスの良い食生活を心がけよう.

慢性関節リウマチだからという理由で,食べていけないものはないが,肥満は下肢の負担になるため,過食は避け,標準体重を守ることが大切だ.

次に冷えや湿度にも注意を払おう.

体が冷えたり湿度が高くなったりすると,リウマチを悪化させることがある.

入浴は体を温め,血液の循環をよくし関節の痛みも軽減されるが,入浴後に体を冷やさないよう,水気を残さずしっかりと拭くことが大切だ.

関節リウマチと白血球除去療法

全身の関節に炎症が起き,関節の骨が破壊され,やがて変形し,日常生活に支障をきたす関節リウマチ.

患った人にしかわからない,つらい痛みに苦しめられるこの病気にも,画期的な薬が開発されている.

しかしそれらの薬も使用しているうちに効果が減弱してきたり,副作用の影響で薬が使えなかったりする人もいます.

その場合に有効であると考えられているのが,白血球除去療法だ.

実際にそれくらいの効果があるのだろうか.

白血球は本来異物を排除する働きを持っているが,何らかの理由で自分の関節の滑膜を攻撃し,炎症を起こしてしまうのが関節リウマチだ.

この病気の進行に影響を及ぼす白血球を取り除き,病状を改善させるのが,白血球除去療法だ.

これは透析のように血液を一方の腕の静脈からいったん体外に取り出し,フイルターで白血球を取り除いた後,もう一方の腕の静脈に戻す治療だ.

それまで生物学的製剤が使えなかった人でも,白血球除去療法により入れ替わった血液のおかげで,生物学的製剤が使えるようになることもある.

しかし白血球は常にからだの中で作られているため,目立った副作用がないという利点がある反面,効果の持続が短く,効果がもって3ヶ月ほどとも言われている.

白血球除去療法は,一時的には有効と考えられるが,効果の持続性が認められない,また費用が高額(1回の治療で約15万円)などの理由から,この治療法が普及すると考えるのは難しいかもしれない.

関節リウマチ レーザー治療

関節リウマチを治療する上で患者さんから求められるものは,まず痛みを取り除くこと.

そして関節組織の破壊をくい止めることではないだろうか.

これらを目標とする治療は非ステロイド性抗炎症薬や抗リウマチ薬がその中心だが,薬によっては長期にわたって投与した場合の副作用を無視できない.

そんな中,レーザー治療は全身性の副作用がなく(少しだるさを覚える程度),リウマチの進行を抑制したり,腫れ,こわばり,痛みを軽減する有効な治療法として最近注目されている.

(関節リウマチ治療に用いられる低出力レーザーは,皮膚に障害を与えない出力以下にエネルギーを押さえてあるものだ.

但し,眼に直接照射すると,網膜に損傷を与える危険がある.) レーザー治療による鎮痛作用はよく知られているね.

レーザー治療後に関節の痛みが軽減されたという報告はよく聞かれる.

次に期待される効果として,既に破壊が進んでしまった関節に対する関節機能の改善と,機能を維持する効果がある.

これは薬物療法には期待しにくい効果だ.

このように有効な治療法として期待されるレーザー治療だが,レーザー療法のみで関節リウマチの炎症がすべて抑制できるわけではない.

薬物療法により免疫異常を改善できれば,関節の変形をかなり防げることもわかっている.

薬物療法,レーザー療法,それぞれの利点を組み合わせ,慢性関節リウマチの症状をコントロールする必要がある.