関節リウマチの原因として考えられること
なぜ関節リウマチが起こるのか,病気の原因は今のところすべて解明されたわけではないが,免疫システムの異常がかかわっていることが明らかになってきた.
免疫とは,病原体などの異物(「抗原」という)が体内に侵入してきたときに,異物を攻撃する武器(「抗体」という)を作って,異物を対外へ排除するシステムのことをいう.
この免疫システムになんらかの異常が起きると,さまざまな病気を引き起こする.
例えば花粉症や食物アレルギーなどは,特定の花粉や食べ物の成分などに過剰に反応してしまうという免疫システムの異常によるものだ.
これらの免疫反応の標的は,あくまでも体外から体内に侵入した異物だが,なかには,本来なら免疫反応を起こさないはずの自分の体を構成する成分を異物と間違えて抗体を作り,自分自身を攻撃してしまうことがある.
このような病気を「自己免疫疾患」といい,関節リウマチはこの自己免疫疾患のひとつになる.
関節リウマチの患者さんのおよそ7割が「リウマチ因子」と呼ばれる特有の自己抗体をもっている.
このリウマチ因子が,本来なら自分の体を守るために働く免疫グロブリン(Ig)の中のIgGという抗体に反応して,トラブルを起こする.
但し,このリウマチ因子は,健康な人でも持っていたり,逆にリウマチ因子を持たない関節リウマチ患者さんもいます.
そのため,リウマチ因子を持っていることだけが関節リウマチを起こす原因とは言い切れませんが,発病と密接な関係があり診断に重要な要素であることは間違いないだろう.
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リウマチに対する温泉の効果
季節が秋から冬へと向かうと,温泉に行きたくなる.
露天風呂につかりながら,季節の移ろいを感じる・・・日常の嫌なことを忘れて心も体も癒されるひと時だね.
体の調子を整えるために行く人,心のリフレッシュのために行く人,温泉へ向かう目的は人それぞれだ.
ところで,温泉の効能として「関節痛」「リウマチ」その他にもさまざまな症状が書かれているのを見たことはないか.
具体的にどのような効果があるのだろうか.
関節リウマチに対する効果としては,以下の項目がある.
●温熱作用により,鎮痛効果が期待できる ●水中での浮力の働きにより下肢にかかる体重が減少し,下肢の関節への負担と痛みが軽減される ●水の抵抗を利用した筋力増強 ●泉質により血管が拡張され,血流改善や代謝改善が期待できる→痛みの軽減につながる ●温度,圧力,浸透圧,成分などの総合的な刺激により,自律神経の調整が行なわれる 但し,効果を挙げるためには患者さん本人の体調(適応,禁忌),泉質,温度,入水時間,入浴時間帯などさまざまな条件が必要なので,お医者さんとよく相談してほしい.
以上のような効果から,温泉療法はリハビリテーションのひとつとして行なわれる.
これは薬物療法や手術療法と同じように,リウマチ自体を治せるわけではなく,対症療法のひとつなのだ.
関節リウマチの治療は,土台となる基礎的療法と,薬物療法,手術療法,そしてリハビリテーションがバランスよく行なわれることが大切だ.
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リウマチは遺伝するのか?
「私の母はリウマチを患っているけど,遺伝するのかしら?」 このように,家系にリウマチの患者さんがいる人は特に不安も大きいだろう.
そうでなくても,いまや全国で70万人を超える患者さんがいるという病気だから,自分が関節リウマチにかかりやすいのか気になる人はたくさんいると思う.
関節リウマチの原因として免疫の異常がある.
関節リウマチの患者さんには,DR4というたんぱく質で作られたHLAという遺伝子を持つ人が健康な人に比べて多く,このHLA‐DR4遺伝子が免疫システムに異常を起こすのではないかと考えられている.
「遺伝子」レベルでの原因も確認されたとなると,ますます関節リウマチは遺伝病であると思ってしまう人もいるだろう.
たしかに,一卵性双生児(同じ遺伝子を持つ)がどちらも関節リウマチになる確率は,二卵性双生児(異なる遺伝子を持つ)より高いことが知られている.
また,関節リウマチ患者が多い家系もある.
関節リウマチの発病には遺伝因子がかかわっていることは否定できないのだ.
しかし,遺伝的要因を持っている人でもそれだけで発病するわけではなく,ウィルス感染やストレス,出産など,何らかの環境因子が加わって発病するわけだから,必ずしも遺伝が発病の決定的要因とはいえない.
実際に健康な人でもHLA‐DR4遺伝子を持っている人もいるのだ.
逆に,親から正常な遺伝子を受け継いでも,ウィルス感染などで遺伝子が傷つけられ,関節リウマチになる場合もある.
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「リウマチ」とは?
ほとんどの人が「リウマチ」という言葉を聞いたことがあると思う.
でも「お年寄りがかかる神経痛のことかしら」と答える人もいるようで,リウマチという病気は正しく理解されていないのが実状のようだ.
たしかに,これまで全身の関節や,関節周囲の骨,筋肉などが痛み,それらの機能に障害が起こる病気のすべては,原因ががわからなかったために漠然と「リウマチ」と呼ばれてきた.
「リウマチ」は正しくは「リウマチ性疾患」と言います.このリウマチ性疾患には,「関節リウマチ」を始めとし,「全身性エリテマトーデス」「変形性関節症」「痛風」など,多くの病気が含まれている.
これらの「リウマチ性疾患」には,関節や関節周囲の痛みがある,という共通の症状はあるが,病気により痛みを起こす原因はさまざまであることがわかってきている.
今わかっている原因として「免疫の異常」「細菌やウィルス感染」「代謝の異常」「外傷や加齢」「ストレスなどの心因性」が挙げられる.
「関節リウマチ」に関しては,患者さんの血液検査の結果より,血液中からリウマトイド因子という異常なたんぱく質が発見され,免疫の異常が原因であろう,と考えられるようになった.
ちなみに「リウマチ」の語源はギリシア語の「リューマ(流れ)」だ.
「関節の痛みは,脳から悪い液が流れ出し,関節にたまって起こる」と定義づけられていたようだ.
「リウマチ」という全身にかかわる病いは人類の歴史とともに古くから存在し,今もわたしたちを悩ませているのだね.
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関節リウマチの進行
関節リウマチは,関節に慢性的な炎症が起こり,痛みや腫れが生じる病気だ.
炎症が長引くと,関節周囲の骨や軟骨などが破壊されていく.
【初期】 関節を包む「滑膜」という組織に炎症が起こることから始まる.
炎症により滑膜が増殖し,厚く腫れ上がる.
関節液が大量にたまり始め,こわばりや痛み,熱感が現れ始める.
【中等度】 滑膜が増殖し,軟骨を侵食していく.
関節周囲の筋肉が萎縮し始めるが,関節自体の変形は起こっていない.
【高度】 軟骨だけでなく,骨まで侵食・破壊された段階で,筋肉の萎縮も進みる.
動きが悪くなり,関節にも変形が見られる.
骨と骨が噛みあわない「脱臼」が起こることもある.
【末期】 破壊が進み,骨と骨がくっついてしまう.
痛みはやわらぎますが,関節はまったく動かなくなる.
このように,関節の破壊・変形が進行すると,その部位によって日常生活に不自由な面が出てくる.
しかし,薬物療法を早い段階から取り入れることにより,重症化する前に症状をやわらげられる例も増えている.
中でも特効薬とされる抗リウマチ薬だが,効き目が現れるまでに時間がかかるため,即効性のある非ステロイド抗炎症薬や,場合によってステロイド薬を併用する.
【初期】【中等度】の段階で薬物療法の効果が現れにくい場合は,滑膜切除術や人工関節術などの手術療法も考えられる.
手術によりリウマチ自体を治せるわけではないが,炎症の起きた滑膜を取り除くことで,進行性を,ある程度の期間,沈静させることが可能となる.
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関節リウマチの診断基準
関節の痛みを伴う病気は,関節リウマチに限らず,多種多様に存在する.
そのため,関節リウマチを診断するには以下のような基準(アメリカリウマチ学会による)が設けられている.
●起床時に関節のこわばりがある ●3箇所以上の関節に腫れがある ●手首や手指の関節が腫れている ●関節の腫れが左右対称にみられる ●手のエックス線検査で異常がみられる ●皮下にしこりがある ●リウマトイド因子が陽性である 以上のうち,症状に照らして4項目以上あてはまると,関節リウマチと診断される.
ここにあるリウマトイド因子が陽性,ということはつまり血液検査によるリウマチ反応が陽性,ということになる.
「リウマチ反応が出た」という言葉に敏感になってしまう人もいるかと思うが,健康な人や,関節リウマチ以外の病気を持った人に陽性反応が出ることもある.
逆に,関節リウマチ患者でも10パーセント程の人は陽性にならないこともある.
リウマチ反応が陽性でも,即「リウマチである」というわけではない.
診断の際に大事なのは,あらわれている症状だ.
朝起きた時に手を広げようとしたらこわばった,肘の外側や後頭部,膝の前部などの皮膚の下に痛みのない小さなしこりがある,などの具体的な症状だ.
上記7項目のうち,血液検査やエックス線検査結果以外の症状は,家庭での自己チェックもできるので,思い当たる症状があれば受診の際にお医者さんに伝えてほしい.
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